アプリのお作法②

サヤカはマッチングアプリで知り合った男とお茶をした。マッチングして、メッセージでお互いに見定めて、やっと会う。サヤカは長々とメッセージを続けるのがあまり好きではないので、有り無しを見極めるために、早く会ってしまいたい。長い道のりを乗り越えた男ではあるものの、正直のところテンションが上がっていたわけではなかった。ただ結局のところ会ってみないと分からないし、会ってみた。悪くはない。年収が低いことは知っていた。ただ就活がうまくいかなかったことを今でもコンプレックスを持っていることは知らなかった。醒めてしまったサヤカは適当なタイミングで切り上げ、帰路についた。

自分自身がある程度稼いでいるサヤカは、相手の年収自体は気にしていない。けれどもあまりに年収の差があると生活水準に差が出てくる。サヤカは仕事のストレスを美味しいレストランでの食事や買い物で発散しているところがある。年収の低い男性と付き合うと、浪費として咎められることがあるのが嫌なのだ。

サヤカは思う。生活を全く変えなくていい男がどこかに残っていないのだろうかと。アプリ必勝法を検索して、趣味が海外旅行とは書いていけないのだと知る。旅行が趣味の女は地雷らしい。東京の一等地に住んで、欲しいブランド物を買って、海外旅行に行く。何が悪いというのだろうか。サヤカはただため息をついて、考えるのをやめた。

(つづく)