金沢での長い散歩

金沢に初めて行ってきた。雲ひとつない晴天。そんな天気の中訪れた金沢城公園は圧巻だった。なんといってもあの広さだ。桜の木の下でゆっくりピクニックでもしたくなる。建物は、江戸時代から残る部分はかなり限定的だが、雰囲気は分かる。階段が急で、とにかく寒い。カーペットの敷かれていない床に足から体温を奪われる。豪華ではないが、人の手だけで階段のある建物が作られたことに驚く。

兼六園は桜の時期になると無料開放されるらしい。運良く無料開放日に訪れることができた。その分人は多かったが。花嫁衣装で訪れているカップルも何組かいた。結婚式なのか、ただの写真撮影なのかは分からない。金沢城同様に圧巻なのはその広さだ。ぼーっと物思いに耽るには最高の場所だ。

金沢には昔ながらの街並みが多く、観光客だろう若い女の子は着物を着てはしゃいでいる。レースのお花みたいに締められた帯が可愛く、よく似合っていた。自己満足だけのために、その労を厭わない女の子たちが眩しかった。街では男の子のパーマとベレー帽が流行っているようだった。

とにかく美味しいお寿司を食べたかったが、美味しいんだけど、感動という感じではないのが少し残念だった。期待値が高いと美味しく感じないのかもしれない。おでんだったり、中田屋のきんつばやお茶屋さんの和菓子だったり、日本酒だったり、名産品を味わえたからまあいいか。日本酒の黒岩や手取川が美味しいことはわかった。

加賀温泉とは少し相性が悪かった。落ち着かないんだ。温泉は露天があったり、ジャグジーがあったり悪くはないのだけど、古いシャワーやお料理がイマイチだったりで、もっと長くいたいとかまた来たいとは思えなかった。建物の外観は風情があって素晴らしいのだけど。金沢市のホテルにはトゴール鉱石を使った人工温泉があった。アクセスの良い場所には人が集まるから、設備も新しくできる。街には美味しい食べ物が集まる。風情で行ったら地方の温泉宿だけど、一般人が少し贅沢したくて泊まるレベルの地方の温泉宿(超高級旅館ではない)の経営は厳しいと思わざるを得ない。

万国共通で地方の建物は低い。土地が余っているから高い建物を建てる必要がないんだ。何もない街をバスで通過しながら、世界各国の田舎街を思い出す。コロナで久しく移動が制限される中で、久しぶりの旅行。もはや大して感動することもなくなった私がそれでも旅行に行くのは、長い散歩をするため。そして大したことなかったと堂々と言うため。